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東京地方裁判所 昭和62年(行ウ)142号 判決

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告らに対してそれぞれ昭和六〇年六月二五日付けでした事業所税の決定(課税標準二一〇五・二六平方メートル、税額一二六三万一五六〇円、不申告加算金額一二六万三一〇〇円)を全部取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  課税処分

被告は、原告らそれぞれに対し、請求の趣旨1記載の事業所税の決定(以下「本件決定」という。)をし、右各決定はその日付けころ原告らに通知された。

2  不服申立て

原告らは、昭和六〇年八月六日、東京都知事に対し本件決定を不服として審査請求をしたが、同知事は昭和六二年九月一八日付けで審査請求を棄却する旨の裁決をし、右裁決は同月二九日原告らに送達された。

3  本件決定における課税根拠

本決定は、原告らが別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)を建築したことに関し、原告らに事業所用家屋の新築又は増築に係る事業所税(以下「新増設に係る事業所税」という。)を課したものであるが、被告は、新増設に係る事業所税の課税標準である新増設事業所床面積の計算において、これを本件家屋一棟全体の新増設事業所床面積の合計面積であるとし、かつ、原告らを建築行為を共同した者で地方税法(以下、単に「法」という。)一〇条の二第一項の連帯納税義務者に該当するとして本件決定に及んだものである。

4  本件決定の違法事由

(一) 新増設事業所床面積

法七〇一条の三一第一項六号は、新増設事業所床面積における増築の定義として、家屋の床面積を増加することであるとし、右の家屋とは固定資産税に関する法三四一条三号の家屋をいうとしているところ、同条一二号は、区分所有に係る家屋の専有部分が建物登記簿に登記されている場合においては、当該区分所有に係る家屋を固定資産税についての家屋とする旨規定しているのであるから、事業所税における新増設事業所床面積の計算は、区分所有建物については各区分所有者の所有部分ごとに計算すべきで、一棟の建物を基準にして計算してはならないのである。

本件家屋は、原告らが建築に際して各自の所有部分を決定し、対応する共有部分と合わせて建築代金を定めたうえ、敷地を提供する者は敷地と建築代金とを等価交換することとして原告株式会社四谷建工(以下「原告四谷」という。)と請負契約を締結し、原告四谷は自らその工事をする者となって本件家屋を建築したもので、原告らの区分所有建物であるから、本件家屋に係る新増設事業所床面積は原告ら各自の所有部分ごとに計算すべきであり、これによれば、原告ら各自の新増設事業所床面積はいずれも新増設に係る事業所税の免税点である二〇〇〇平方メートル以下である。

したがって、被告が、本件家屋の新増設事業所床面積を一棟の合計面積で計算し、これに基づいて免税点を超えると判定したのは、事業所税の課税要件の解釈を誤ったもので、違法である。

(二) 連帯納税義務

(1) 被告が原告らを本件家屋の建築行為を共同した者であるとする根拠は、原告らが共同で本件家屋の建築確認申請を行い、それに基づいて一棟の建物である本件家屋が建築されたということにある。

しかし、法七〇一条の三二第一項は新増設に係る事業所税の納税義務者について「当該事業所用家屋の建築主」と規定しているだけであって、建築主を一棟の家屋を基準として決定せよとの定めはないし、共同で建築確認申請をした建築主は連帯して納税義務を負うとの定めもない。建築確認申請は、建築基準法上の物理的・構造的判断のためのものにすぎず、連帯納税義務の前提としての「共同行為」の判断資料とすることは誤りである。

原告らはそれぞれ本件家屋中の自己の所有部分及び共有部分を建築したに過ぎず、その結果として一棟の建物である本件家屋が完成に至ったとしても、原告らそれぞれが他者の所有部分についてまで建築を共同したものではない。

(2) 租税法における納税義務者は課税物件の帰属主体が原則であるところ、連帯納税義務に関する前記法一〇条の二第一項は、所有関係が判然と区別できない場合に関するものであり、同項の「共同行為」とは、共に意思を通じて一つの行為を行いながら誰が責任を負うべきか判然とせず、賦課すべき責任の所在が確定できない行為を指すものと解すべきである。

本件家屋は、前述のとおり原告らの区分所有建物であって所有関係は明確であるから、右規定の適用はないというべきである。

(3) 連帯納税義務について被告のように解釈すると、次のような不合理を生じる。

(ア) 互いに隣接する土地の所有者が新増設事業所床面積が一一〇〇平方メートルの家屋を各所有地上にそれぞれ同時に建築しても課税されないが、二棟分の床面積の家屋一棟を両土地にまたがって建築してそれぞれ各所有地上の部分を区分所有すると課税され、連帯して納税義務を負うことになる。

両者の違いは壁一枚を多く作るかどうかだけである。

(イ) 三名の者が新増設事業所床面積の合計が二〇〇〇平方メートルを超える家屋を建築する場合、六階建にして階層を分けて三人が区分所有者となると建築を共同したことになって連帯して納税義務を負うが、右家屋を横にし、二階建にして壁を一枚ずつ多く造って三棟の家屋とすれば同時に建築しても課税されないことになる。

縦のものを横にし、壁を一枚多く作ると課税されないわけである。

(ウ) 複数の者が事業所用以外の家屋と考えて区分所有建物を建築した場合、そのうち一人が二〇〇〇平方メートル以上の床面積を事業所用家屋として使用すると、他の者が突然連帯納税義務を負わされてしまう。

(エ) 本件の場合、原告白戸は事業所用床面積を全く有しないのに納税義務を負わされることになり、また、事業所税の負担を原告らの内部でどのように配分すべきかを決める方法がない。

以上(ア)ないし(エ)の不合理は、被告の解釈が無理なものであることの証左である。

(4) したがって、被告が原告らを連帯納税義務者としたのは法の解釈を誤ったもので、違法である。

よって、原告らは、本件決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認め、同4の主張は争う。

三  被告の主張

1  本件家屋の建築

原告らは、一棟の家屋である本件家屋を建築(新築)することを計画し、昭和五八年一月二〇日東京都新宿区建築主事に対し原告らを建築主として本件家屋に係る建築確認申請を行い、同年三月一六日その確認を得た。原告らは、右確認に基づいて本件家屋の建築を開始し、昭和五九年六月二三日ころ本件家屋を完成させて、同月二五日同建築主事から検査済証の発行を受けた。右によると、本件家屋の新築という建築行為は、原告らの共同行為によるものということができる。

2  税額の計算

本件家屋のうちの新増設事業所床面積(人の居住の用に供する以外の部分の床面積)の合計は二一〇五・二六平方メートルであるところ、右面積を課税標準として新増設に係る事業所税の税額を算出すると一二六三万一五六〇円となる(法七〇一条の四二第二項)。

3  不申告加算金

原告らに対する事業所税の賦課・徴収の権限は、東京都都税条例(昭和二五年八月二二日東京都条例第五六号)四条の三により、東京都知事から被告に委任されているところ、原告らは被告の再三の勧告にもかかわらず本件家屋に係る新増設に係る事業所税の申告をしなかったため、被告は本件決定に至ったのであり、前項の税額を基礎に不申告加算金を計算すると一二六万三一〇〇円となる(昭和六二年法律第九四号による改正前の法七〇一条の六一第二項)。

4  原告主張の違法事由について

(一) 新増設事業所床面積の計算

新増設に係る事業所税は、事業所用家屋の新増設が都市の財政需要を増大させることになるため、その建築行為に着目して建築主に対して課することとしたものであって、建築後の所有関係は課税要件とは関わりがなく、一棟の事業所用家屋全体について計算した新増設事業所床面積が課税標準となるのである。

原告らが主張するように区分所有建物については専有部分ごとに新増設事業所床面積を算定し、免税点を判定するのであれば、非課税法人等及び特例法人等とその他の者との共同新増設で当該法人等が区分所有権を有することとなる場合に、法七〇一条の三四及び法施行令五六条の四九並びに法七〇一条の四一及び法施行令五六条の七一等が、非課税又は課税標準の特例の取扱いを適用するにあたり税額計算上共同行為が排除される場合のあることを定めていることが無意味になってしまうこととなり、原告らの主張は現行法上採用しえないものといわざるを得ない。

(二) 連帯納税義務

(1) 法七〇一条の三二第一項の「事業所用家屋」とは、一棟の家屋を意味するものであることは文理上明らかである。また、建築基準法との関係については、法七〇一条の三一第一項八号は「建築主」の定義として「家屋に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。」と規定しており、これは建築基準法二条一六号の「建築主」の定義と同じである。

本件家屋が原告らを建築主として建築されたものであることは右1に述べたとおりであり、原告らは新増設に係る事業所税の課税要件である建築行為を共同したものとして右規定により連帯して納税義務を負うのである。本件家屋が原告らの区分所有建物だとしても、原告らが本件家屋の各自の所有部分について個別に建築確認申請をすることはできないのであるから、請負契約も当該部分についてだけでなく一棟の家屋として締結されたというべきであり、建築代金についても一棟全体として算出した金額を基礎として各自の面積比によっているにすぎない。

(2) 連帯納税義務に関する法一〇条の二第一項の「共同行為」を原告主張のような場合に限定するのは誤りである。

なお、事業所税には、固定資産税のように区分所有建物について納税義務を連帯としない特例を認める規定(法三五二条)はない。

(3) 原告らが被告の解釈による不合理であると主張する請求原因4の(二)の(3)の(ア)ないし(エ)の事態のうち、(ア)、(イ)については、各自がたとえ同時であれ、それぞれ別棟の家屋を建築する場合には、各自が一棟の建物を建築する目的で他の者と意思を通じないで行った行為であるから、共同行為とはならないのは当然のことであって何ら不合理な事態というべきではなく、また、事業所用家屋の床面積は一棟の延べ面積の問題であって、壁が一枚多いとか縦のものを横にするとかの問題ではない。同(ウ)については、一棟の建物の完成後に建築主の一人が自己の区分所有部分の用途を変更して事業所用とした場合は、法七〇一条の三二第三項により納税義務者となるのは用途を変更した者だけであり、原告の主張するように他の者が連帯納税義務を負わされることはない。同(エ)については各自の所有部分に係る事業所用床面積の割合に応じて負担する等原告らの内部で公平な負担の配分を図ることが可能である。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張1のうち、本件家屋の新築という建築行為が原告らの共同行為によるものであることは否認し、その余の事実は認める。同2、3の事実及び計算関係はいずれも認める。ただし、本件家屋に係る新増設事業所床面積の合計をもって課税標準とすることの適否は争う。同4の主張は争う。

なお、被告は、事業所税には固定資産税のように区分所有建物について納税義務を連帯としない特例を認める特段の規定(法三五二条)はないというが、区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税の納付義務は、法三五二条が存在するから連帯とならないのではなく、各区分所有者に対してその所有部分につき個別に課するのが原則だから連帯とならないのであって(法三四三条二項)、ただ、共有部分についてはそのままでは法一〇条の二第一項によって連帯納税義務が生じるためその適用を排除して専有部分の割合によることにしたのが法三五二条であり、被告の主張とは趣旨が異なる。

第三  証拠〈省略〉

理由

一  請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

二  原告らが一棟の家屋である本件家屋を建築(新築)することを計画し、原告らを建築主とし本件家屋に係る建築確認申請を行い、その確認を得た上、原告らが右確認に基づいて本件家屋の建築を開始し、昭和五九年六月二三日ころ本件家屋を完成させたこと、本件家屋のうちの新増設事業所床面積(人の居住の用に供する以外の部分の床面積)の合計は二一〇五・二六平方メートルであることは当事者間に争いがない。

また、〈証拠〉を合せ考えると、本件家屋の建築に際して、原告らはこれを区分して所有することを意図し、建築後における各自の専有部分を予定し、これとこれに対応する共有部分を勘案して各自の建築代金を定めた上、原告四谷を除く原告らは、注文主となって原告四谷と請負契約を締結し(敷地を提供する者については、敷地と建築代金とのいわゆる等価交換等がされている。)、また、原告四谷は、自ら工事をする者となり、本件家屋に係る建築確認申請及びその確認はそれぞれ一のものとしてされており、本件家屋の建築工事はすべて原告四谷によりされたものであって、建築後、原告らは、当初の予定に応じて各自の専有部分を区分所有しているものであることが認められる。

三  ところで、新増設に係る事業所税は、事業所用家屋の新築又は増築に対し、当該事業所家屋の建築主に対し課されるものであって(法七〇一条の三二第一項)、その課税標準は、新増設事業所床面積であり(法七〇一条の四〇第三項)、新増設事業所床面積が二〇〇〇平方メートル以下である場合には課税されないこととなっている(法七〇一条の四三第三項)。そして、右の事業所用家屋とは、家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの(法七〇一条の三一第一項七号。なお、この家屋については、同項六号により、法三四一条三号の家屋をいうものとされている。)、右の新増設事業所床面積とは、新築又は増築(家屋の床面積を増加することをいう。)に係る事業所用家屋の床面積として政令で定める床面積をいうもの(法七〇一条の三一第一項六号)、右の建築主とは、家屋に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自ら工事をする者をいうものとされている(同項八号)。

他方、法一〇条の二第一項は、共同行為に対する地方公共団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負うと規定し、この地方公共団体の徴収金には、地方税及び不申告加算金が含まれる(法一条一項一四号)。そして、右の法一〇条の二第一項の規定は、課税要件に該当する行為を共同でした場合には、内部関係いかんを問わず、その各共同行為者は、いずれもその共同行為全体について、課税要件を充足したものとして納税義務を負担し、その納付は、各共同行為者が連帯して行う旨を規定したものと解するのが相当である。

四  右二の事実によると、原告らは、建築主として、本件家屋の一部である事業所用家屋を新築し、その新増設事業所床面積の合計は二一〇五・二六平方メートルであり、また、同事実からすれば、本件家屋は、一棟の建物で、その建築確認申請は、原告らが一のものとしており、その確認もまた一のものとしてされており、建築(新築)工事はすべて原告四谷によりされているものであるから、本件家屋の新築は、建築主である原告らが共同でしたものであって、原告らの共同行為であると解するのが相当である。したがって、原告らは、いずれも右新増設事業所床面積の合計二一〇五・二六平方メートルを課税標準とする新増設に係る事業所税の納税義務を負い、また、その納付は、原告らが連帯して行わなければならないものというべきである。

五  叙上の見解に対し、原告らは、これに反対する見解を述べているので、その点につき判断する。

1  まず、原告らは、新増設事業所床面積の計算は、いわゆる区分所有建物については、所有部分ごとに計算すべきであると主張し、その根拠として、法三四一条一二号が区分所有に係る家屋の専有部分が建物登記簿に登記されている場合には当該区分所有に係る家屋を固定資産税についての家屋とする旨規定していることを挙げている(請求原因4の(一))。

しかし、同条一二号の規定は、そもそも固定資産税に関する規定であって(そのことは、原告らの自認するところである。)、それが新増設に係る事業所税に適用ないし準用されるとする根拠は見い出し難い。

のみならず、原告らの右主張は、右規定にいう区分所有に係る家屋を個々の専有部分と理解することを前提としているものと解されるが、右の区分所有に係る家屋とは、個々の専有部分ではなく、一棟の家屋全体を指すものと解すべきであるから、右主張はその前提を欠く。すなわち、右規定はその文言上も右のように解すべきことは明らかであるし、また、右規定は、法三五二条が区分所有に係る家屋につき、各専有部分ごとあるいは各共有部分ごとに価格を評価することが著しく困難であること等に鑑み、区分所有に係る家屋(付属建物を含む。)一棟の全体の価格を一括して評価した上当該家屋の固定資産税額を算定し、この税額を一定の基準によって各区分所有者に配分し、その配分額を各区分所有者の納付すべき固定資産税額とすることとしていることに対応するものであり、そこでも区分所有に係る家屋が一棟の家屋全体を指すことは明瞭であるからである(なお、原告らの事実摘示四の主張は、法三五二条が区分所有に係る家屋の共有部分についてのみの固定資産税額の配分規定であるとの理解に立っているかにみえるが、そうであるとすれば、明らかに誤解であって、同規定は右に述べたような趣旨のものである。)。

そうすると、原告らの右主張は、到底採用することができない。

2  次に、原告らは、原告らとしてはそれぞれ自己の所有部分及び共有部分を建築したに過ぎず、その結果として一棟の建物である本件家屋が完成に至ったとしても、原告らそれぞれが他の者の所有部分についてまで建築を共同したものではないと主張する(請求原因4の(二)の(1))。

しかし、本件家屋の新築は、原告らが共同でしたものであることは先に判断したとおりであり、原告らが請求原因4の(二)の(1)において挙げる事情をもってしても右判断を左右するに足りない(なお、原告らが、一棟の家屋である本件家屋について、一の建築確認申請をしていることも、右判断の一つの根拠となり得るものである。)。

さらに、原告らは、租税法における納税義務者は課税物件の帰属主体が原則であり、法一〇条の二第一項は、所有関係が明瞭でない場合の規定であると主張する(請求原因4の(二)の(2))。

しかし、法一〇条の二第一項の規定は、租税収入の確保を図る等の見地から設けられたものであって、右三に述べたとおり解するのが相当であり、そのように解しても、右の趣旨に鑑みれば、あながち不合理なものとはいえない。

なお、原告らは、右のような解釈によると種々の不合理な事態が生じるとも主張している(請求原因4の(二)の(3))。

しかし、請求原因4の(二)の(3)の(ア)、(イ)については、新築に係る家屋が一棟か二棟かによって原告主張のような相違が生じるのはむしろ当然のことであって、これをもって不合理とすべきではない。また、同(ウ)については、一棟の家屋の新築を共同行為でする場合においては、共同行為者は相互にその家屋のうちに事業所用家屋がどの部分であり、どれだけの床面積であるかを認識しているのが通常であるから(本件でも、それに反する事情を認めるに足りる証拠はない。)、その主張は前提を欠くし、また、建築後に共同行為者の一人が用途を変更したというのであれば、納税義務者となるのは法七〇一条の三二第三項により用途を変更した者だけであって、他の者が連帯納税義務を負うものではないから、原告らの主張は、その点でも誤った前提に基づくものである。さらに、同(エ)についても、自己の専有部分に事業所用床面積を有しない者は、法一〇条一項により負担する連帯納税義務について共同行為者間で合理的基準に基づき内部的な負担割合を定め、それにより公平な解決を図ることは可能であるから、必ずしも不合理なものとはいえない。

そうすると、原告らの右各主張は、いずれも採用することはできない。

六  被告の主張2、3の事実及び計算関係については当事者間に争いがなく、これに右四の判断を合せ考えると、本件決定は適法であって、何ら違法な点はない。

七  以上によれば、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 石原直樹 裁判官 佐藤道明)

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